Published on 2025-11-10

医療分野では、小さな部品の設計が製品全体の性能を大きく左右することがあります。IVセット(輸液セット)はその代表的な例です。
IVセットを構成する各部品は、単純な水分補給から薬剤投与、栄養補給などの治療まで、医療従事者が患者へ適切かつ迅速に処置を行うために重要な役割を果たしています。
では、IVセットはどのような部品から構成され、それぞれどのような役割を担っているのでしょうか。また、安全かつ安定して機能するIVセットを製造するためには、どのような製造工程や品質管理が必要なのでしょうか。
Table of Contents
IVセットの構成部品とそれぞれの役割

IV(Intravenous:静脈内投与)セットは、輸液、薬剤、栄養剤、血液などを患者の血管内へ直接投与するために使用される医療機器です。
水分補給、薬剤投与、栄養補給、輸血など、さまざまな医療用途で使用されており、IVセットを構成する各部品の品質や機能性は、安全で安定した治療を支える重要な要素となります。
主なIVセット構成部品には、以下のようなものがあります。
ドリップチャンバー(点滴筒)
液体の滴下速度を目視で確認するための透明なチャンバーです。また、チューブ内への空気の流入を防ぐ役割も担います。
チューブ
IVバッグや容器から患者まで輸液を運ぶ、柔軟な医療用チューブです。
針・カテーテル
カテーテルは静脈内へ挿入し、継続的な輸液や薬剤投与などに使用されます。針は一時的な投与などに使用されます。
注入ポート
輸液チューブに設けられたポートで、必要に応じて追加の薬剤などを注入するために使用されます。
流量調整器
輸液の流量を調節し、適切な滴下速度に設定するための部品です。
IVコネクター
IVセットと患者側のカテーテルなどを確実に接続するための接続部品です。
クランプ
チューブ内を流れる液体の開始・停止や流量管理などに使用される部品です。
フィルター
輸液中の微粒子や空気、対象となる微生物などを除去し、患者への流入を防止するために使用されます。
IVバッグ・輸液容器
輸液、薬剤、血液などを保持するためのバッグまたは容器です。
スパイク
IVバッグや輸液容器のポートへ挿入し、輸液セットと接続するための部品です。
エアベント
輸液容器内へ空気を取り込み、投与によって減少した液体分を空気で補うための構造です。
Yサイト
複数の輸液や薬剤などを同一の輸液ラインへ接続するために設けられる分岐接続部です。
逆止弁
液体が輸液チューブ内を逆流することを防ぐ一方向弁です。
ルアーロックコネクター
医療機器部品同士を確実に接続し、液漏れや意図しない接続解除のリスクを低減するために使用される接続部品です。
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IVセットの主な4種類と用途

医療現場では、使用目的や輸液容器などに応じて異なる種類のIVセットが使用されます。代表的な4種類を紹介します。
1. フィルター付きIVセット
フィルター付きIVセットには、輸液中の微粒子などを除去するためのフィルターが組み込まれています。
用途に応じてさまざまな孔径のフィルターが使用され、不要な微粒子が患者の血管内へ流入するリスクを低減します。
2. ベント付きIVセット
ベント付きIVセットには、ドリップチャンバー付近に空気を取り込むためのベントが設けられています。医療従事者がベントを開閉することで空気の流入を調整し、重力と圧力を利用して輸液をチューブ内へ流します。
3. ノンベントIVセット
ノンベントIVセットには外気を取り込むためのベントがありません。
一般的に、輸液が流出するにつれて容器自体が収縮する柔軟なバッグなどと組み合わせて使用されます。使用前にはチューブ内を輸液で満たし、内部の空気を除去するプライミングが行われます。
4. 重力式輸液セット
重力を利用して輸液を患者へ投与する一般的なタイプです。
患者より高い位置に輸液バッグを設置し、高低差による重力を利用して輸液を流します。急速な投与を必要としない場合などに使用され、一定の速度で輸液を供給します。
IVセット構成部品の製造工程
IVセットの製造では、原材料から完成品に至るまで、品質や安全性を確保するために適切な製造管理が求められます。
1. 材料の選定と準備
IVセットには、PVCをはじめとする医療用途に適したプラスチック材料や、DEHPを使用しない材料などが使用されています。
製品用途に応じて、生体適合性、柔軟性、薬剤との適合性などを考慮して材料を選定する必要があります。
また、ゴム製部品やイソプレン製部品など、一部のIVセット構成部品については、専門メーカーから調達された部品が使用されることもあります。
2. IVセット部品の射出成形
選定されたプラスチック材料を使用して、IVセットを構成するさまざまな部品を製造します。
射出成形では、加熱して溶融したプラスチック材料を金型内へ射出し、冷却・固化することで目的の形状へ成形します。
特にコネクターや流量調整部品などでは、適切な嵌合や機能を実現するため、安定した寸法精度と成形品質が重要になります。
3. 組立・接続
成形された部品をチューブと接続し、ドリップチャンバー、フィルター、コネクターなどを組み合わせてIVセットを組み立てます。
製品の清浄度要求に応じて、ISO 8クリーンルームなどの管理された環境で組立を行うことで、製造工程における微粒子や異物混入のリスクを低減します。
適切に管理された組立工程は、IVセット構成部品の品質と機能を安定させ、安全で信頼性の高い医療機器製造を支える重要な工程です。
4. 滅菌と品質管理
組立後のIVセットは、製品仕様や要求に応じてエチレンオキサイド(EtO)滅菌やガンマ線滅菌などの方法によって滅菌されます。
また、製造工程ではリーク試験や流量確認などの品質検査を実施し、IVセットの完全性や機能が要求仕様を満たしているかを確認します。
5. 包装・出荷
必要な品質検査を完了したIVセットは、輸送・保管中の清浄性や製品品質を維持できるよう適切に包装されます。
製品仕様に応じて個別包装を行った後、複数の製品を袋や小箱などにまとめ、さらに輸送用の外装箱へ梱包して出荷します。
IVセット構成部品と輸液技術の今後

IVセットおよび関連アクセサリー市場は、2023年に12億300万米ドル規模となり、2032年には17億4,700万米ドルに達すると予測されています。こうした市場成長の背景には、在宅医療の普及や生体適合性材料への需要、治療の個別化など、医療環境や患者ニーズの変化があります。
また、生体適合性を考慮した材料の採用も進んでおり、患者への負担や合併症のリスク低減を目的とした新しい材料や製品の開発が進められています。
さらに、患者や医療従事者のニーズに合わせた、より柔軟でカスタマイズ性の高い治療への需要も増加しています。
こうした市場の変化に伴い、IVセットやその構成部品にも、より高い精度、安全性、材料適合性、製造品質が求められるようになると考えられます。
THY精密工業の精密射出成形でIVセット部品の製造をサポート
信頼性の高い医療機器を製造するためには、医療分野での製造経験と安定した品質管理体制を持つ製造パートナーの選定が重要です。THY精密工業は、長年にわたり医療機器向けプラスチック部品の製造に取り組み、精密射出成形や金型製作などの製造技術を蓄積してきました。
高精度なプラスチック射出成形と品質管理を組み合わせることで、IVセットをはじめとする医療機器構成部品に求められる寸法精度、機能性、安定した品質の実現を支援します。
また、製品仕様や製造要件に応じて、医療用プラスチック部品の金型製作、射出成形、クリーンルームでの組立・包装など、開発から量産まで幅広い工程をご相談いただけます。
医療機器部品やIVセット構成部品のOEM・受託製造、精密射出成形については、THY精密工業までお問い合わせください。
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